企業保育器とは
高所得者にはほど遠いあるアメリカ人の夫妻が、何とか企業家の道を踏み出したのは、ほかならぬ「保育器」のおかげだそうです。
イギリスで物理学専攻の学生だった夫は、1976年、アメリカの〈機会と可能性〉を信じて渡米してきました。
まもなくジョージア工科大学のリサーチ・サイエンティストとして迎えられます。
そこで科学者の卵だった夫人と知り合いになり、結婚しました。
2人は、大学が80年に創設した、ハイテク企業を育てるための「先端技術開発センター」(ATDC)にもぐり込みます。
このATDCに「保育器」というニックネームがあります。
キャンパス内に立派な2棟のビルを持ち、その中で未成熟企業約20社が、すくすくと育っているのです。
資金のない企業家にとって、オフィス、コンピューター、研究資料、実験室をただ同然の安いコストで使えるのは、大きな魅力です。
夫妻はその保育器の中で、日夜、共同研究を続けているうちに「イオン・インプランテーション」という新
技術を開発しました。
これは、金属やセラミックの表面をイオン処理して耐久性を数10倍も高めるという画期的なものです。
「そこで、大学側にすすめられて、82年4月に会社を作ったのです。
会社といっても妻と私の2人だけで、典型的なシード(種)カンパニーというんでしょうか。
その後も、保育器の施設を利用させてもらいながら、どうしたらこの技術を商業べースに乗せられるか、あれこれ試行錯誤を繰り返してきました。」


